《訪問年:2016年》
ロックフィルダムとは岩石や土砂を積み上げた構造のダムの事です。
青土(おおづち)ダムは野洲川上流にあり、1988年(昭和63年)に完成した県営の多目的ダムです。
さらに上流にある灌漑用の野洲川ダムを補助し、洪水軽減や水資源確保の為に建設されました。
堤高43.5m、堤頂長360m、総貯水容量730万立方メートルです。
このダムの特徴は自由越流頂式(ゲートレス)の常用洪水吐きと非常用洪水吐きです。
「常用洪水吐き」は常満クレスト(自由越流堰)・ゲートレスオリフィス直結型を2門採用。
「非常用洪水吐き」はクレスト自由越流式を2門採用しています。
ダム穴(グローリーホール)に近い形をしています。
「洪水吐き」とは洪水がダムに入ってきた際にダム保安の為に使用する放流設備です。
洪水調整が目的のダムでは、下流河川保護の為に調整放流する為の設備の事も言います。
自由越流頂式の常用洪水吐きは日本ではほとんど採用されていない珍しい構造です。
アメリカ等外国にはいくつかありますが、重力式やアーチ式ダムでの採用がほとんどです。
ロックフィルダムなのでデザインが特殊となり、この形は世界でもここにしか無いと言われています。
このダムの平常時最高貯水位は標高292m(貯水率100%)です。
常満クレストを採用している為、普段から水位は290m付近となっています。
洪水時最高水位は300m(貯水率275%)で、最高水位を越えると非常洪水吐きから越流していきます。
貯水率275%は現実にはあり得ない数字なので、放流を見る事はまずありません。
越流放水しているかは、滋賀県の土木防災情報システムというサイトで確認する事が出来ます。
ダムはよく無用の長物や税金の無駄使いとして批判の槍玉に挙げられます。
治水ダムの効果は巨額の建設費に見合ったものなのか、はたまた机上の空論に過ぎなかったのかは、実際に運用を開始するまで分からないと言われています。
実際、無駄使いで終わったダムは存在します。
目に見える判り易い部分しか報道されていませんが、建設には多くの犠牲や故郷を失う悲しみを伴っている事を、ないがしろにしてはいけないと思います。
ただのコンクリートの塊かもしれませんが、土木技術の粋を結集してダムは造られています。
普段何気ない事でも視点を変えてみると違った面が見えてくるかもしれません。
全景。広場となっています。
ダム下に公園が多いのは、建設時のコンクリートサイトや事務所などの跡地を転用したためです。
手前の塔は取水設備です。
ダム堤体。
ロックフィル式なので、表面は全て岩石で覆われています。
中央に向かって順に細かい岩石の層となっており、中心部は砂が詰められています。
砂で水の浸透を止め、岩石の自重で水圧を支える構造となっています。
ダム頂上部は県道となっています。
このダム特徴の洪水吐きです。
上段が「非常用洪水吐き」で、下段が「常用洪水吐き」です。
この日は水位が291mでした。
水面に穴が開いているかの様です。
楕円形を半分にしダム堤体にくっついているので、グローリーホールの様な不気味さはありません。
非常用洪水吐き。
こちらは四角形をしています。
減勢工。
手前から導流部、減勢池・水叩き、副ダムと言います。
水の勢いを殺し、ダム堤体や下流の護岸を保護する目的で設置されています。
以前はダム湖に浮桟橋があり歩いて渡れましたが、現在は流されたのか破損したまま通行不可となっています。
別日で放流中の様子です。
水が穴に流れ込んでいるような感じです。
吸い込まれそうな独特な雰囲気があります。
グローリーホールに近い構造となっています。
自由越流頂式なので、越流部は水が白く流れており美しいです。
「日本一美しいダム」と言われている、大分県の白水ダムに通ずる部分があります。
減勢工。
水が流れていると構造物が見えませんが、各部が仕事をしているのがよくわかります。